この子は、フランスの血を引くご婦人の家に長く置かれていました。
※夜禍ノ店が扱う品は、すべてが前の持ち主様より縁あって託された、唯一無二のものにございます。
同じものは二つとなく、それぞれに異なる過去と宿す力を秘めております。
私どもは、某国の市場で数百円にて仕入れ、数万にて売り払うような無粋な真似は一切いたしません。
ここに並ぶのは、真に必要とされる方、運命によりその縁を結ばれる方のみへと渡るべきもの。
どうか、魂が惹かれたその瞬間を信じていただければ幸いです。
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ご婦人は生涯を通じて、家族や親しい人を不慮の事故や病で何度も失ったそうです。
そのたびに「次は誰を失うのだろう」と恐れ、心が休まることはありませんでした。
ある日、祖母の形見であるこの人形を手に取り、
「私のもとに不幸が来るなら、どうか先に知らせてほしい」と願ったところ、
不思議と胸が軽くなり、少しずつ日々の不安が和らいだといいます。
それ以来、旅や外出の前にはこの子を見つめてから出かけ、
大きな事故や危険を避けることができたと語っていました。
「この子は死を知らせる存在ではなく、死を遠ざける守り手だ」と信じ、
亡くなる直前まで枕元に置いていたそうです。
ご婦人の遺言として、
「次にこの子を必要とする人のもとへ、必ず渡してほしい」
と伝えられ、灯へと託されました。
とても強い守り護符としてお預かりしたものになります。
夜禍ノ店 ‐祀神 灯‐